第73回社会を明るくする運動 第3夜 報告…

シリーズ最終回の第3夜は「更生保護にどう関わるか?」と、意見交換をしながら考える、オープンディスカッション方式です。中江理事長と協力雇用主で保護司の鈴木先生をメインゲストに、保護司の橋本先生のコーディネートで開催しました。

中江理事長はルミナの活動を通して、広報・講演活動や被害者支援を行なっておられます。そして、一番力を入れているのが、元受刑者の再犯防止のための支援事業の就労支援です。

また保護司も、保護観察の中で就労支援を考え、彼らと同じ目線で探してはいますが、多くの問題点が見えてきました。

まず問題提起からスタートです。「なぜ犯罪を犯した人への就労支援は必要か?」

就労支援の必要性 再犯をして刑務所に戻った人の多くが仕事をしていなかった (令和3年度矯正統計)

令和3年度の矯正統計で、再犯時の無職者約72%、有職者28%という数字があり、比較素材がないので一概には言い表せないですが、安心安全な地域社会を実現するためには、第1に、犯罪や非行をした人が、職に就き責任ある社会生活を営むことが必要。そして第2に、それを支援することが必要と考えました。

受け皿として、協力雇用主制度というのがあり、協力雇用主さんが一人雇うごとに奨励金を頂ける各種の支援制度があります。

協力雇用主社数は、全国総数では年々増え続けているのですが、京都府全域では減少傾向、コロナ禍などの影響もあったと思いますが、4年間で37社減の327社です。

京都市内協力雇用主社数
全国協力雇用主社数と実際に雇用している協力雇用主社数

協力雇用主の鈴木先生からは体験談として、雇用した少年についての報告がありました。

この少年は別の保護司からの紹介で雇うこととなったのですが、もともと家庭環境に冷たさがあり、本人の状況を鑑みて日額から食事代を内払いするなど配慮されていましたが、冬場の8〜9kmの自転車通勤が辛くなり、次第に欠勤が増え、3ヶ月持たなかったと。

保護観察は続いており、「あの時やっていた仕事をなんで辞めたんだろう、もう少し我慢して続けていれば良かったと言い出した」と聞かされたそうです。

〜中略〜

少年の引っ越しに伴い保護観察は移動県の保護司に引き継ぐこととなったのですが、少年から連絡があったそうで、その内容は「少しでも遅刻すると、日給以上の罰金。こういうことで雁字搦めにされて、人手不足の為、仕事を辞められないようにして、ほとんどただ働きみたいになっている」ということで、協力雇用主のブラック企業の存在が明らかに。

今の担当保護司に相談にのってもらったら?と助言すると、「1回電話が掛かってきたが、忙しくて放っておいたら、何ヶ月経っても連絡が来ない」「引っ越してから一回も保護司と会っていない」ということで、こちらも問題。

業種別の協力雇用主の割合 (令和3年10月1日現在)

中江理事長からは、「建設業は、その道の者が多く入ってきます。これは見たらすぐ判るんです。そして現場では元受刑者同士、出来るヤツは潰される事もあるんです」と。

就労支援の問題として、①ブラック協力雇用主の存在。②協力雇用主となりながらも実際に刑務所出所者等の雇用に結びついていない事業主が多い。③協力雇用主の約5割が建設業を占めるなど、業種の偏りが生じている。事がわかりました。

川見も保護観察をした体験をお話ししましたが、その彼には広汎性発達障害(PDD)があり、受刑者が社会に出された時の受け皿としての就労支援が最も重要ではあるが、社会環境に対応できない事が多いのではないか?生活環境支援も同等に必要では?高齢者の場合はどうだったか?また就労支援として受け皿はあるのか?など、色々考えさせられました。

更生保護については、まだまだ考えていかなければならないことが山積みです。保護司は、加害者の立場に立つ更生保護を行っていますが、それは「やっているつもり」なのかもしれません。

罪を犯し、刑罰を受け、社会に戻って更生の再スタートをきる人の裏側には、犯罪被害者として一生、苦しみ続ける方々が居られます。

被害者遺族の気持ちを理解し、寄り添い、耳を傾けることから、更生保護活動が始まるような気がするのは私だけでしょうか…